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海族レポートVol.3


横浜唯一の人工海浜、金沢海の公園

金沢区海の公園は横浜市唯一の海水浴場です。昭和40年代から沿岸部が埋め立てられて行くなかで、仕事を失う漁師さんの転業対策のために様々な業種の会社が作られました。海の公園の管理運営の受託業務をしている金沢臨海サービスもそのひとつだそうです。海の公園は数ある人工海浜でも成功例として挙げられ、東京湾全体から稚貝が浮遊してきて定着している、潮干狩りで有名な公園にもなりました。

海の公園では潮干狩りがいつまでも無料で出来るようにするために、沖合約300mまでを公園区域に指定し、ひとり2kgまでとする資源保護対策をしています。ただ今年は稚貝の生育がわるく来年以降の収穫が心配されています。アサリを食べてしまうツメタガイやガザミ類などのカニなども沢山います。潤沢に湧いていたアサリを取り巻く環境も変わりつつあるようです。


海のゆりかごアマモの実態

アマモの生育場所としても活用されており年々その範囲が広がっています。ブルーカーボン(海洋植物が吸着、固定する二酸化炭素)への取り組みとして、また豊かな海の象徴としてアマモは脚光を浴びています。また「海のゆりかご」として稚魚たちを外敵から身を守ったり、産卵場所として注目されたアマモ場ですが、最近の調査で、実は外周部には魚たちがいるけれども、中央部分にはあまりいないことがわかってきました。つまり適正な密度を保たなければ、単にアマモ場が大きくなったことがイコール豊かな海でもないかもしれないということです。さらにライフセーバーとしての視点からは生育しすぎたアマモ(長くなり海面を覆い尽くしてしまう)が救助用水上バイクの故障にもつながり救助の妨げになる頻度も多くなってきたそうです。


利用と保全のジレンマ

海の公園開設当初から、波もなく遠浅でウインドサーフィンの初心者ゲレンデとして有名ですが、繁茂し過ぎたアマモ場に入るとフィンに絡みつき急ブレーキがかかり海面に叩きつけられてしまうような事例も発生しています。刈り込み手入れが必要だと考えていますが、なかなか許可がおりず手入れが停滞しています。アマモの集落を小さめにして多数繁茂したほうが海のためにもよいのですが、アマモ繁殖を推進する団体からの反発もあります。海水浴場としては年々、利用者が減っています。鋭い葉っぱの周縁部により擦過傷になったり、マリンスポーツをするには絡みつき気持ち悪いなど、アマモ由来の問題も加担しているようです。

海の公園の挑戦

近年、海の公園のアマモに一部刈り込みの許可がでて実施しています。またその二次的利用として農家の方に引き取っていただき堆肥として活用してもらっています。これを使った柑橘類は糖度が高くなり、高級レストランで人気となっています。アマモ以外にも大量漂着で問題となっているアオサがあり、こちらもブルーカーボンとして注目されています。

里山という言葉に対して里海という言葉が生まれています。里海というからには里山のように人間が手をいれて整備し続ける必要があると考えています。そのためにもアマモ場のコントロールは必要です。今の環境問題の一部はアマモや象徴となる「何か」を隠れミノにした人間関係問題へと複雑に発展しているようです。こうした課題も含め、海の公園が今後どのような取り組みをしていくか気になります。

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